幕を引くということ。2014年04月01日 11:01

三十二年と聞いて改めて勘定してみると、僕が最初の就職で東京の広告代理店に入社して今年でちょうど三十年なので、昨日終了した番組が始まったのは、その二年前ということになる。

当時、僕の会社ではタモリさんと日野皓正さんを起用した男性化粧品のCMシリーズを製作しており、そのブランドから発売される新商品のために、新しいキャラクターを起用した新しいCMを製作することになった。そのチームの末端にいた僕も企画提案に参画させてもらったのだけど、長い長い紆余曲折の果てに、なんと僕が推薦した候補が最終のプレゼンテーションで決定してしまった!

前年に放映されていたドラマ『昨日、悲別で』(倉本聰脚本)に主演した天宮良さんだったのだけど、まだ彼はそのドラマを観た人にしか認知されていない頃で、文学部演劇専攻で倉本聰さんと山田太一さんをテーマに卒業論文を書いた僕くらいしかその存在をしらなかった。実際、上司にもクライアントにも天宮良を知る人は居なかったのだ。

新作CMは世界の日野皓正と新人天宮良の出演で製作することになり、何年も日野さんとコンビを組んでもらっていたタモリさんには降板していただくことになった。あの時の緊張を覚えている。お前がタモリさんに引導を渡したのだから、とタモリさんの所属事務所である田辺エージェンシーに、部長と課長のお伴をして降板のお願いに行ったのだった。

新しいものが華々しく生まれる背後に、こうした地味で胃の痛くなるような作業が存在するのだということを社会人一年生の僕は経験させてもらった。

僕も自分が担当した番組の終焉に立ち会ったことがある。
生命あるものには必ず終わりがやって来るということ。
その瞬間をどのように迎えるか。
どう心構えをするのか。

弥生三月別れの季節を乗り越えて、
四月卯月は出逢いの季節になるのか。

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