冬の花火。2005年12月11日 00:05


地震被災の中越の町の、
祭りのドキュメンタリーをやっていた。
新成人が山車を引きながら8時間も町中を練り歩く。
大声で叫び、踊りながら。
関所のようなところで「おとな」に一升瓶を手渡し、
「ここを通してください」と。
酒を受け取ったおとなは「新成人から酒をもらったぞ!」と叫び、
これをもっておとなの仲間として認める儀式とする。

そして、祭りのクライマックスは、花火。

おとなの決意を表明する、新成人の花火。
新しい仲間として受け入れる、おとなたちの花火。

この町では、年に一度、花火にコトバを添え、思いを託して打ち上げる。

白血病で亡くなった16歳の妹を弔うため、
稼ぎのすべてを花火につぎ込んだ二十歳の兄の花火。
「この花火は俺の全財産だ!」
泣きながら叫ぶ兄。

32歳で急死した長男を弔う両親の花火。

あの地震で奇跡的に全員助かったけれど、
目前で長年住み慣れた家屋の撤去を余儀なくされた家族の花火。

この町では、花火を打ち上げる前に、
必ず託されたそれぞれの思いが読み上げられる。

夜空を見上げる町民たちは、
一発ごとに願いを添え、感謝を込め、涙を流し、笑顔が溢れ…。

こんな感動的な花火を見たことがない。
一瞬ごとに消えてしまう儚いひかりが、
これほど重たく感じられたことはない。


今朝方の訃報や、去年急逝した、年下のかつての二人の同僚のことや、
生き死ににかかわる数々の断片も思い起こされ、
涙が止まらなかった。

僕もそうしたいくつかの思いのために、
花火を打ち上げたい。

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